裁判官というお仕事の雇用形態とは?働き方の詳細や身分保障について

masman

by idu

更新日:2019-06-25

公開日:2019-06-18

裁判官-雇用形態とは

裁判官の雇用形態を知っている方はいますか?働き方についても裁判所で判決を言い渡すだけという印象を持つ方が多いと思います。実は裁判官は沢山の仕事内容を抱え、雇用も民間とは少し違う形態なのです。今回は裁判官の仕事の詳細や身分保障を解説します。

       

裁判官という仕事は、高い専門性が必要で法律・憲法によってのみ拘束され、そして自身の良心に従い独立して行う事が憲法により定められています。

そんな裁判官の雇用形態とはいったいどうなっているのでしょう?一般企業の正社員とはどんな事が違うのでしょうか。

詳細な働き方や身分保障とは?といった疑問に応えるべく、裁判官の仕事について詳しく解説していきます。

裁判官の雇用形態とは?

裁判官の雇用形態

裁判所には日本トップの最高裁判所とその他の下級裁判所があり、下級裁判所の中には高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所があり、最高裁判所とその他の裁判所では雇用形態も変わります。

最高裁判所は最高裁判所長官1名と判事15名で構成され、下級裁判所の裁判官、弁護士、大学教授や行政官等の識見が高く法律知識の高い、裁判官経験20年以上か法律の専門家で年齢が40歳以上の方から選出されます(裁判所法第41条)。

下級裁判所でも簡易裁判所以外は判事補・簡易裁判所判事・判事、検察官や弁護士、裁判所調査官、司法研修所教官や法律学の大学教授や准教授(通算10年以上)の方から任命されます(裁判所法42条)。

簡易裁判所では高等裁判所長官や高等裁判所判事、判事補や検察官・弁護士、裁判所事務官、法務事務官・法務教官、法律学の大学教授や准教授(通算3年以上)や司法事務を長年務めて簡易裁判所判事の仕事に必要な学識や知識のある者から選考を受け簡易裁判所暗示に任命される事もあります(裁判所法44条・45条)。

裁判官の特徴的な雇用形態には以下の事柄もあります。

裁判官は期限付き雇用である

裁判官には10年という期限をひとくくりにして任官する事が憲法と法律で定められています。再任を希望すれば大抵は再度10年間、裁判官と言う仕事を続ける事が出来るという雇用形態がとられているんです(憲法80条1項、裁判所法40条3項)。

国家公務員でありながら、期限付きの雇用形態なのは心身の不調により裁判官という仕事に支障をきたした裁判官や、任官させたものの事件の処理能力が進まない裁判官に対し、退職させることができない為、期限付きの雇用形態にして人員整理する為に必要な措置だとされています。

現在はほとんどの裁判官が再任し、裁判官の仕事を全うしています。裁判官の定年は最高裁判所と簡易裁判所は70歳になった日に定年、他下級裁判所は65歳になった日に定年で退官します。

3~5年ごとに転勤がある

裁判官は3~5年ごとに異動する事が決まっていて、基本的には本人の同意を得て行われている事も、一般とは違う雇用形態だと言えます。勤務地の希望を出すことも出来ますが、大多数が殺到する希望地が首都圏と京阪神に偏るので、必ずしも希望が通るということはありません。

希望者の多い裁判所に転入する判事補という階級の裁判官は〇年後には最高裁判所が指定するところに異動しますという紳士協定的な約束を書面でする事もあります。

転勤の際の引っ越し代金は人数と距離により定額で多少は手当てが出ますが、大方は実費になることが多いようです。

勤務時間が決まっていない

裁判官には勤務時間というものが無く、裁判が行われない時はどこで仕事をしてもかまわないという民間とは違う雇用形態がとられています。

割り当てられた事件さえ的確に処理すれば、毎日早く帰ることも出来ます。ですが、資料やデータを見る為には裁判所にいる必要があることが多い事と、書記官が作成した書類を確認する必要があるので、裁判所職員が勤務している時間には裁判所に詰めている事が多いのです。

裁判官には宅調という業界用語があり、自宅で起案作成する事を指すのですが、自宅で1日仕事をする日をとることもよくあります。

民間では勤務時間が決まっている事が多いですし、拘束時間もあるので、雇用形態としても働き方としても裁判官ならではと言えるでしょう。

裁判官としての働き方とは?

裁判官の働き方

裁判官として任官されてすぐに、東京や大阪等の大きな規模の地方裁判所に配属され、最初の2年半は3人の裁判官で行われる合議事件の左陪席裁判官を務めます。

その後、全国各地の地方・家庭裁判所にて左陪席裁判官として勤めながら事件の処理に努めます。判事補経験3年で簡易裁判所判事の任命資格を得られるので、簡易裁判所で判事として働く裁判官もいます。

判事補経験が5年を経過すると特例判事補という階級に指名され、判事と同様に単独裁判を行うことも出来るようになります。その他裁判官ならではの働き方にはどんな事があるのかをご紹介していきます。

階級社会の裁判官

司法試験合格後、司法修習を行い司法修習生考試に合格した中でも成績優秀者が裁判官になるのですが、任官してすぐは判事補12号という階級になります。判事補とは一人で裁判を行う事が出来ない階級で、約10年程先輩裁判官と共に合議制という3人で行う裁判を経験する必要があります。

ですが3年ないし5年で特例判事補や簡易裁判所判事という階級に上がれば小さい事件を一人で担当する事が出来るようになります。その後判事という階級に上がり、大抵の人は判事4号として定年を迎えます。

判事3号から1号という階級は高等裁判所判事や地方・家庭裁判所長や裁判長になる人くらいです。その中から高等裁判所長官になる人、東京高等裁判所長官になる人、最高裁判所の裁判官になる人がいます。

民間では出世する為に成績を残す事が必要な場合が多いのですが、裁判官は判事4号までは毎年昇進していくので、民間とは給与形態も働き方もかなり違いますよね。

週2~4日は裁判をする

裁判所では月曜~金曜まで毎日裁判が行われることが多いですが、一人が毎日行うのは少なく、裁判官により担当曜日が決まっていたりするので、場所にもよりますが大抵は週2~4日担当する事が多いようです。裁判だけで見ると働き方としては週休3~5日のように見えますね。

裁判によっては裁判官が一人で担当する単独事件、裁判官3人により行われる合議事件、最高裁判所では5人の裁判官で行う小法廷と15人全員で行う大法廷があります。

その裁判所により変わりますが、1日数件の裁判を行う事もあるのですが、裁判をしていない時には次々に処理しなくてはいけない事件の起案をしています。

もちろん民間では裁判はありませんが、会議だとして考えても1日に数件もありませんし、裁判官の働き方としての特徴であることが分かりますね。

裁判をしていない時は

基本的に裁判資料を読み、過去の判例やデータを確認し、事件を法律に当てはめて判決起案の作成をします。忙しい裁判所では裁判官1人につき年間250~300件もの事件を抱えているので、裁判をしている時間よりも起案作成している時間の方がかなり長くなります。

そしてどれだけの量の判決起案を作成し、処理したかどうかは各裁判所所長や長官のような管理職によりチェックされていて、次の異動や昇進の評価・評定になります。

その他、地方裁判所の裁判官は警察から要望があったときに逮捕状や捜査令状の発行もします。これは深夜に行われる事もある為、宿直担当を決め順番で行うのですが、民間には無い働き方ですよね。

裁判官の身分保障は手厚い

裁判官の身分保障

日本国憲法の第78条に「裁判官は、裁判により、心身の故障の為に職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は行政機関がこれを行ふことは出来ない。」とされています。

裁判官は仕事をする上で公平であらなければならないので、身分をはく奪される事やそのおそれが無いように、上記の憲法で身分保障の確立を定めています。

心身の故障と表されている病気の場合か余程のことがない限りは罷免(解雇)になる事は無いとしているのです。

もう一つ、裁判所法第48条に「裁判官は公の弾劾又は国民の審査に関する法律による場合及び別に法律で定めるところにより心身の故障の為に職務を執ることができないと裁判された場合を除いては、その意思に反して免官、転換、転所、職務の停止または報酬の現悪をされることはない。」ともされています。

裁判官は解雇されにくい?

いくら裁判官の身分保障が手厚いとはいえ、弾劾裁判で罷免(解雇)される事があります。裁判官の身分保障が手厚くても、禁止事項もあるので、それらに違反した場合は裁判官でも裁判を受けるのです。

裁判官が弾劾されるときというのは、職務上の義務に明らかに違反した時や職務を大幅に怠った時、裁判官としての威信を損なうような行いをした時等です。

過去には事件処理を行わず多数の事件を失効させたり、民事事件に個人的に介入した、物品の受け取りや犯罪行為を行った等があります。

このような場合には身分保障を問わずに弾劾裁判で裁判官も裁かれ刑に付しますが、弾劾裁判を受けるかどうかの審議の前に依願退職や強制退職、再任取り下げをする裁判官もいました。

それは身分保障されている間に退職手続きを踏めば弁護士に転職できたり、退職金を受け取れることがあったからです。現在は訴追された裁判官の離職や辞職は認められませんが、訴追する為の調査中に任期満了してしまうと弾劾裁判を行えないと言ったこともあります。

懲戒処分にはなります

裁判所法第49条により「裁判官は職務上の義務に違反し、若しくは職務を怠り、又は品位を辱める行状があったときは、別に法律で定めるところにより裁判によって懲戒される。」とされています。

処分として「罷免」「戒告」「過料」という3段階があり、懲戒処分にはなりますが、民間と比べればとても軽いもので、戒告または1万円以下の過料(罰金)程度です。

これは裁判官の身分保障により、停職や減給が認められず、罷免と戒告の間の中間懲戒処分が出来ない為なんです。

とはいえ実務上、上司からの高等での厳重注意や自ら辞職する諭旨免職(依願退官)もあり、民間と近い処分を行われる事もあります。

裁判官の身分保障は給与にも反映

裁判官はその高い身分保障が給与にも表れています。民間や官庁とは違い、人事査定が任官から20年程は反映されず、毎年一律に昇給していく事と、手厚い各種手当てで任官1年目から月給4ヵ月分のボーナスがあり、年収600万円程になり、任官10年目ほどで年収が1000万を超えるのです。

判事4号までは全員一律に昇給するのですが、3号に上がる為には過去20年分の評価がポイントになります。判事3号ともなれば地方裁判所所長クラスで、かなりの出世になる訳です。

そうでなくても民間企業には無い手厚い手当てが多数あると言う事で月給も年収も高い裁判官は給与面でも身分保障されていると言う事になります。

裁判官の雇用形態や働き方の詳細とは?高い身分保障についての解説まとめ

裁判官はその仕事の特異性から、独特な雇用形態や働き方をしている事がご理解いただけたでしょうか。

民間とは違い、365日24時間いつでも仕事ができる働き方をしている裁判官の雇用形態は期限付き雇用だと言う事を初めて知った方もいるでしょう。

裁判が行われていない間の働き方も私達とは全く違い、いつでもどこでも、自宅やカフェ、図書館で仕事を進めている裁判官もいるようです。

身分保障についても給与面だけでなく、雇用に対する保証もされているので、難易度の高い司法試験に合格し、独立した仕事ができる裁判官を選択しようと思う人間性の高い方にしかできない仕事なのだと言えるでしょう。

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